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【文星閣DX航海日誌・1】文星閣、未来への船出─DX航海の幕開け

1. DX推進の必要性

パンデミックによる業界の大変革

2020年、世界を襲ったパンデミックにより、あらゆる業界が大きな打撃を受けました。印刷業界も例外ではなく、紙媒体の広告やイベントが激減したことで、印刷需要が急速に減少しました。多くの企業がデジタルシフトに舵を切る中、文星閣も急激な変革を迫られました。従来のビジネスモデルや「人力に頼る」アプローチは限界を迎え、特に生産量だけを評価基準にする時代は終わりを告げました。

新工場のビジネスモデルへの適応

文星閣は、新工場の設立とともに、業務の効率化と新しいビジネスモデルへの適応を余儀なくされました。従来の「生産量重視」の体制や、マンパワーに頼る印刷業務は、新工場のオペレーションにおいては持続不可能となり、急速な効率化が必要でした。固定費や生産体制を見直し、コスト削減とともに付加価値の提供を追求することが、次の成長の鍵でした。

コロナによる印刷需要の減少

パンデミックの影響で広告やイベント関連の印刷が激減し、文星閣の収益も大きく減少しました。2020年8月時点で、営業利益はマイナス1億円を超える状況に陥り、文星閣は大きな危機に直面していました。従来のビジネスモデルでは、会社の存続は不可能であることが明確となり、抜本的な改革が急務となりました。

「私たちは、印刷業界の未来に向けた準備ができていなかった」
「2020年の時点で、印刷業界はコロナを契機に劇的な変化を迎えることが確実だったのです」
(文星閣CSO 奥 武士氏)

人材教育と効率化への対応

印刷業界全体が、デジタルシフトや業務効率化に取り組む中、文星閣も同様の課題に直面しました。人材教育の難しさや、採用の厳しさに加え、効率化を進めなければ、競争力を維持することは困難でした。こうした背景から、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進し、業務プロセスの根本から見直しを行う必要がありました。DX推進が、文星閣を次のステージへ導く唯一の道でした。

2. DX推進室の設立と初期の取り組み

DX推進室の誕生

2020年9月、文星閣はDX推進室を設立し、全社を挙げてのデジタル化をスタートしました。ここでは、データに基づいた業務改善や戦略の見直しを通じて、収益構造の改革を目指しました。

タイムカードの廃止と勤怠管理のデジタル化:Tablet Time Recorderの導入

まず最初に取り組んだのが、タイムカード廃止とデジタル勤怠管理システムTablet Time Recorderの導入です。従来、紙ベースで行われていたタイムカードを廃止し、このシステムにより従業員の労働時間をリアルタイムで管理。これにより、従業員の勤務形態が効率的に管理できるようになり、勤怠データを経営に活用することで生産性が向上しました。

「今まで当たり前だった『紙による管理』が、デジタル管理へと移行する大きな一歩でした」
(文星閣CSO 奥 武士氏)

Microsoft Teamsによる社内コミュニケーションのデジタル化

文星閣では以前からMicrosoft 365(旧Office 365)を導入していましたが、その活用は不十分でした。Microsoft TeamsOneDriveの利用が進んでおらず、社内での情報共有や連携に課題がありました。これを機に、社内コミュニケーションを効率化するために、Teamsの活用を推進。これにより、各部署間の情報共有がスムーズになり、リモートワークを含めた新しい働き方が定着しました。

Knowledge Suiteによる業務管理の効率化

さらに、プロジェクト管理や進捗状況を可視化するためにKnowledge Suiteを導入。これにより、全社員がアクセス可能なポータルを作り、スケジュール管理、設備予約、営業報告などがデジタル化されました。また、申請フローの自動化も行い、手作業の煩雑さを大幅に減らしました。

  • 設備予約とスケジュール共有: 設備の予約やスケジュールの共有がリアルタイムで行えるようになり、業務の効率化が実現しました。
  • 営業報告のデジタル化: 従来の紙ベースの営業報告をデジタル化することで、営業活動の透明性と効率性が向上しました。

データを活用した課題発見と解決

DX推進室では、経営データを徹底的に分析し、赤字の原因を明らかにしました。データに基づく戦略的なプロジェクト管理により、課題解決のための具体的なアクションを実施しました。例えば、サービスの価格適正化や属人的な業務の削減、情報の共有化などが進められ、業務全体の見直しが行われました。

「デジタル化が進むと、目に見えて業務の効率が改善され、問題点が浮き彫りになりました。
 これによって、具体的な対策が可能となったのです」
(文星閣CSO 奥 武士氏)

3. 今後のDX航海に向けての準備

DX航海の始まり

文星閣のDX推進は、まるで「海を渡る航海」のようなものです。
最初は小さな改善から始まりましたが、着実に進化を遂げています。新しいデジタルツールの導入が進むにつれ、文星閣の業務はますます効率化され、未来の姿が具体化されてきました。DXは単なる業務効率化の手段ではなく、未来への扉を開く鍵となっています。

会長のひらめきから始まったDX

文星閣のDXプロジェクトは、当時の会長(現社長)の「デジタルツールを導入して会社を再構築しよう」というひらめきからスタートしました。このアイデアは、現場に即したAs-Is状態の把握と、目指すべきTo-Be像の明確化につながり、プロジェクトの指針を定めました。

DX推進の一環として、営業活動をデジタル化する試みが挙げられます。文星閣の営業マンがこれまで行っていた見積もりや受注管理を、顧客が直接操作できるカスタマーポータルというシステムを構築しました。

カスタマーポータルのβ版リリースと今後の展開

2020年9月のDXプロジェクト開始から4年後、文星閣はついにカスタマーポータルのβ版の開発に成功しました。
このポータルは、顧客が自社の印刷プロセスをより効率的に管理できるように設計されています。現時点では、注文内容の確認、履歴確認、詳細画面、そしてチャット機能といった基本的な機能のみが提供されますが、これにより顧客とのやり取りがスムーズかつ効率的になり、営業マンが本来の提案業務に集中できる環境が整いました。

さらに文星閣では以下のような、より高度な追加機能の開発と実装を計画しており、印刷ビジネスにおける多様な課題をITと印刷技術を掛け合わせて解決していく方針です。

  • 見積もり・発注機能: 顧客が自社製品の見積もりをシステム上で即座に取得し、そのまま発注を完了できる機能を開発予定。
  • 商品登録機能: 顧客が自社の商品の登録をポータル上で簡単に行え、注文のたびに商品情報を入力する手間を削減。
  • 在庫管理機能: 顧客が現在の在庫状況をリアルタイムで確認でき、発注タイミングの最適化が可能に。
  • 帳票出力機能: 取引に必要な帳票をポータルから直接出力できる機能を実装し、手作業による書類作成を削減。
  • OCR機能: 紙ベースの書類をスキャンし、デジタルデータに変換することで、紙書類からの情報管理が容易になる。
  • FSC管理機能: 環境に配慮したFSC(森林管理協議会)認証の管理をポータルで一元化し、持続可能な製品管理をサポート。

β版リリースの意義

β版リリースは、文星閣のDX推進における大きなマイルストーンです。このポータルは、これまで手作業で行っていた業務をデジタル化し、印刷業務全体の効率化と透明性向上を実現するものです。文星閣は、β版を基礎にさらなる機能を追加していくことで、顧客のニーズに応えつつ、業界全体のデジタルシフトをリードする役割を果たしていきます。

「カスタマーポータルは、顧客にとって使いやすいシステムであることを最優先に設計しました。
 将来的には、さらなる機能を追加し、ポータルが印刷業務の中核となることを目指しています」
(文星閣CSO 奥 武士氏)

4. DX航海のその先 — 未来への航路

DXの最終目標

文星閣のDX推進は、印刷業界における新しい標準を打ち立てることを目指しています。デジタル化は単に業務を効率化するだけではなく、新しいビジネスモデルの創造を可能にします。従来の印刷業務は、「大量生産」や「短納期」といった競争要素に依存していましたが、DXによって文星閣は、顧客ごとのニーズに応じた柔軟なサービス提供と、環境に配慮した持続可能な印刷プロセスの実現を目指しています。

今後は、以下のような未来の姿を見据えた取り組みを進めていきます。

  • 顧客体験のさらなる向上: カスタマーポータルを中心に、顧客が印刷業務を自己管理できるようにすることで、注文のスムーズな進行をサポート。ポータルは単なる発注管理ツールではなく、顧客と文星閣が長期的に連携するためのプラットフォームとして進化させます。
  • 環境への配慮: FSC管理機能や持続可能な印刷技術の導入により、環境負荷を減らす取り組みを強化。文星閣は、環境に優しい企業として、印刷業界におけるリーダーシップを発揮します。
  • 業界のデジタルシフトの牽引: DXプロジェクトを通じて、文星閣は業界全体のデジタルシフトをリードする存在へと成長しています。印刷業界が抱える課題をデジタル技術で解決し、新たな市場を創出することを目指します。

DXの未来を共有

DXの旅路はまだ始まったばかりですが、文星閣はこの航海を通じて業界に変革をもたらすことを目指しています。DXによって変わりつつある印刷業界の未来を、顧客とともに築いていくというビジョンを共有し、次世代の印刷ビジネスの形を提案します。

CSO奥

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次回のDX航海記録(10月配信予定)もお見逃しなく。

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