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印刷見積の読み解き方とコスト管理【サマーフォーラム参考記事】

第1回WEBセミナーの資料記事・第一弾!

 

9月14日に開催された「BUNSEIKAKU サマーフォーラム」!
オンライン配信を行ったセミナーの参考記事を順次公開しております。
動画や資料の振り返りに、是非ご活用ください!

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【BUNSEIKAKU サマーフォーラム】アーカイブ動画&資料配布ページ - 株式会社文星閣

もし自分が何かを購入する立場なら、同じ品質・同じものであるならば1円でも安い方が良いと考えるのは当然のことです。 特に印刷業界は製品の違いを表現することが難しく、価格競争になりやすいと言えるでしょう。

もちろん良いものを低価格で提供できれば良いのですが、過度な価格競争により売上は上がっていても利益が減少している会社もあります。 利益が無ければ企業は存続が出来ず、いつかは顧客の求めているものを提供できなくなってしまいます。 それは企業として社会へ損失を与えてしまうことにもなります。
適切な利益を得て存続し、社会に対して価値を提供し続ける事こそが、企業の本来の在り方です。

印刷見積という価格競争の中で適切な利益を生み出せているかどうか、今回は製造コストの観点から見ていきましょう。

製造コストこそが正義である!!

製造コストとは読んで字のごとく、その製品を実現し提供するためにかかるコストです。
印刷業における製造コストには、用紙やインクなどの原材料費、印刷オペレーターの人件費や機械を動かす光熱費から、印刷機そのものの減価償却費など様々な要因がありますが、今回はわかりやすく解説するために『稼働単価』というものを設定していきます。

稼働単価とは、前述した製造コストを基にして、10分間単位で機械を動かすのにいくらかかるか?を算出したものになります。
あくまでも一つの指標ですが、製造効率性や単価の適切性を見るには十分に役立ちます。

この稼働単価を基に利益を生み出す方法は、ずばり「仕事を素早く済ませること」です。 同じ成果に対してより短い時間で仕事をこなすことで製造コストを最小限に留められ、利益を生むことができます。

それでは稼働単価という視点から印刷見積を見ていきましょう。

印刷見積で差をつけるテクニック?

例としてA2ポスターの案件を見ていきましょう。 仕様は以下の通りです。

 仕上り:A2ポスター   部数:2000部
 用紙:コート紙 菊76.5kg 色数:4c/4c

この案件を見積もるなら、菊全2面付か菊半1面付かで悩むところです。 実際に比較してみましょう。

このように通常通り見積もると、用紙の使用数が減らせることから菊半1面付の方が安い価格を提示出来る?と思えます。

しかし、ここに稼働単価の視点を加えて適切な利益が生み出せているのかを見ていきましょう。

このように、菊半1面付は印刷枠が縛られ稼働時間が長くなるなどデメリットが多く、製造コストは高くなってしまいます。
見積もり額は安く、製造コストは高くなり、これでは適切な利益を得る事が難しくなってしまいます。

印刷会社の利益とはズバリ、受注額より作業時間である!

次の例を見てみましょう。 特色3cの案件です。 仕様は以下の通りになります。

 仕上り:A4 16p       部数:5000部
 用紙:マットコート A57.5kg 色数:3c/3c(スミ+特+特)

この案件を見積もるとこのようになります。

4c/4cの案件と比べると大きな差があり、一見すると空き胴割増料金を頂かない限りは利益のない案件?に見えます。

しかし案件の仕様が16pではなく160pだとしたらどうでしょうか。

単純に単価だけで比較をすれば、4c/4cと比べると低くなります。しかし3c/3cでは見当合わせが早く済みやすくなるなど、時間的なメリットがあります。

このメリットが10台分ともなると単純な単価の差を上回りました。

印刷会社の利益とはズバリ、受注額より作業時間である!

改めて考えると、印刷のコスト要因は非常に複雑です。
従来のコストの考え方は材料費や人件費、減価償却費などの要因は含んでいましたが、そこに時間の要素を加えて『効率性』を加味してのコスト判断は難しいでしょう。

印刷業界特有の、設計が異なる案件が日々膨大な量とスピードで流れていくという仕事の流れでは、同じ条件を繰り返して習熟していくことが容易ではありません。関わる人の力量の向上が難しければ力量を把握することも難しく、しかしそれが出来なければ効率性を定量的に判断できません。こうした要因によって、時間の要素を加えた動的なコスト分析を困難にしていました。

しかし、低価格でかつ適切な利益を生むためにはコスト分析を的確に行う必要があります。
稼働単価という考え方で一つ一つの案件のコストを分析していくことで、今までコストが合わないと思っていた案件が実は悪い条件ではない可能性もあります。

利益を生み出す社内コミュニケーション

さて、ここまで稼働単価という概念を持ち込んで案件のコスト分析を行うことで適切な利益を出せるかどうかという話をしてきました。これらは日々の受発注業務の中で、どのように活かすべきでしょうか。

それは一つ一つの案件の背景や細かなところまで意識することです。

発注を担当されている方であれば、仕様に落とし込まれた状態で渡されて発注先を探すことも珍しくはないですが、可能な限り詳しく案件の説明をすることが出来れば、使える発注先が増える可能性があるでしょう。

受注を担当されている方であれば、発注者から案件の詳細を聞くことが出来たなら、それを基にしてより良い提案をし、安く高品質なサービスが提供できるかもしれません。

つまり社内で円滑なコミュニケーションを取り、営業・生産管理・製造が互いに互いを理解し、一丸となって目の前のソリューションを提供していくことが、価格競争の厳しい印刷業界で生き残るために求められることでしょう。
決して難しいことではありません、まずは日々のささやかなコミュニケーションから初めてみるのはいかがでしょうか。


(営業部:今井)

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