ハピネスアワー参加デザイナー様インタビュー③

2026年 07月 31日 ハピネスアワー参加デザイナー様インタビュー③

ハピネスアワー参加デザイナー様インタビュー③

2026年2回目のハピネスアワーで、ポスター展にご参加いただいたデザイナーの皆様へのインタビュー企画!

作品に込めた想いや紙・印刷へのこだわり、そして印刷会社とのものづくりの可能性についてお話を伺います。

今回は、音楽業界を中心に活躍されているグラフィックデザイナーの冨貫功一様にお話を伺いました。

CDジャケットや販促物、コンサートグッズ、パンフレットなど、長年にわたり紙媒体のデザインを手掛けてこられた冨貫様。今回のポスター制作に込めた想いや、紙・印刷への深い愛着、そして文星閣との今後の可能性についてお聞きしました。

ポスターを、ポスターのままで終わらせたくなかった

――今回のポスター展では「BEYOND PRINTING」をテーマに作品を制作していただきました。作品に込めた想いや、制作時に意識されたことについて教えてください。

私は普段、音楽業界の仕事が中心で、CDジャケットや販促物、コンサートグッズ、プログラムなど、紙媒体のデザインを多く手掛けています。

音楽業界のポスターは「宣伝物」としての役割が強く、掲出期間が終われば次の告知へ移っていきます。作る側も、どうしても流れ作業のようになってしまう部分があります。

今回はそうした普段の仕事とは少し違う視点で、「ポスターそのものを残したくなる存在にできないか」と考えました。

文星閣さんからご提案いただいた、はじきニスやコーターニスの加工も大きなテーマでした。

せっかく特殊な表現ができるのであれば、その特性をしっかり活かしたい。ポスターを見て終わりではなく、手に取りたくなるもの、持ち帰りたくなるものを目指しました。

ポスターからZINEへ。印刷だからできる仕掛け

 

――作品の中で特にこだわった部分はありますか?

実は今回、自分の中で一番盛り上がったアイデアがありまして。

ポスターの中にあえてトンボを入れているんです。

普通なら仕上がりでは見せない部分ですが、切り取ることでZINEとして使えるような設計を意識しました。

私は普段からZINE制作もしているのですが、ポスターとして飾るだけでなく、冊子のように楽しむこともできる。そんな「別の使い方」を考えるのは、紙ならではの面白さだと思っています。

一枚のポスターが、見るものから「使うもの」へ変わる。そんな仕掛けを考えました。

BEYOND PRINTINGというテーマを考えたときに、単に印刷するだけではなく、その先の楽しみ方まで含めて提案できたら面白いのではないかと思ったんです。

他のデザイナー作品から受けた刺激

 

――会場で他の参加者の作品をご覧になって、どのような印象を受けましたか?

本当に勉強になりました。

みなさん共通して、ニスをどう活かすかを真剣に考えていたと思います。

私自身は隠し文字や隠し絵柄のような使い方を意識していましたが、他の方の作品はまた違ったアプローチでした。

特に印象的だったのは、ニスそのものを主役として成立させている作品です。

「こういう見せ方があるのか」と刺激を受けましたし、自分の作品についても「もっとこうできたかもしれない」という発見がありました。

私は今回、色を多く使い、サンプル帳のような実験的な側面も持たせていました。

ホログラム表現をはじめ、参加者それぞれが異なる方向性で挑戦していて、印刷後に初めて分かる面白さや学びがたくさんありました。

小さい頃から変わらない「紙が好き」という気持ち

 

――デザイナーの立場から見て、紙や印刷ならではの魅力は何でしょうか?

私は小さい頃から本や漫画が大好きだったんです。

広告の裏紙や落書き帳に絵を描いたり、漫画を描いたりしていました。

同じ紙でも鉛筆の乗り方が違ったり、質感が違ったりすることが面白くて、自然と紙に触れていました。

大学では版画やオフセット印刷を学びました。

今回工場に入った瞬間にインキの匂いがして、「ああ、この匂いだ」と懐かしい気持ちになったんです。

学生時代に印刷を学んでいた頃の記憶が一気によみがえりました。

やはり紙の手触りや質感には特別な魅力があります。

最近はデータ中心の仕事が増え、紙を選ぶ機会も少なくなりました。

仕事では用紙が決まっていることも多く、自由に紙で遊ぶ機会が減っているのは少し寂しいですね。

だからこそ個人制作ではZINEやリソグラフなど、紙ならではの表現をこれからも追求していきたいと思っています。

印刷会社だからこそ持つ知識がある

 

――印刷会社に期待することはありますか?

やはり技術的なアドバイスですね。

例えば、特色をどう使うか、モノトーンをどんな組み合わせにすると面白くなるか、そういった知識は印刷会社の皆さんが一番持っていると思います。

昔は色見本を見ながらやり取りする機会も多かったのですが、最近はデータ中心になりました。

便利になった反面、ノウハウを共有する機会は少なくなっているのかもしれません。

また、年齢を重ねると「今さらこんなこと聞いていいのかな」と遠慮してしまうこともあります。

でも本当は聞いてみたいことがたくさんあるんです。

今回、「ぜひ聞いてください」と言っていただけたことで、「相談していいんだ」と思えました。

印刷会社との距離がぐっと近くなった気がします。

工場見学で感じた印刷現場の進化

 

――文星閣の工場見学はいかがでしたか?

まず驚いたのは工場がとてもきれいだったことです。

正直、昔ながらの印刷工場のイメージを持っていたので、そのギャップに驚きました。

また、機械も大きく進化していましたね。

6色機やニス加工設備など、昔は見られなかった設備もありました。

昔は印刷立ち会いをよくしていましたが、職人さんに話しかけるのも緊張した記憶があります。

今回は工程を見ながら説明を聞くことができ、デザインを入稿した後にどれだけ多くの工程があるのかを改めて実感しました。

後工程まで理解すると、印刷物への見方も変わりますね。

最新設備が並ぶ工場でしたが、最後はやはり人の経験と感覚が品質を支えている。そのことを改めて実感しました。

文星閣と一緒に挑戦したいこと

 

――今後、文星閣と一緒に挑戦してみたいことはありますか?

たくさんあります。

まずは、特色だけで構成した印刷物や箔押しなど、普段なかなか仕事ではできない特殊加工に挑戦してみたいですね。

今回のポスター展のような企画も、ぜひ継続してほしいです。

ポスターだけでなく、パッケージやグッズのような立体的なプロダクトにも発展できると思います。

「こんな加工をしたらどうなるんだろう」

「この特色だけで作ったら面白いんじゃないか」

そんな実験的なものづくりを、デザイナーと印刷会社が一緒に考えながら進めていけたら楽しそうです。

仕事ではなかなか挑戦できないことを、思い切って試せる“実験の場”として、こうした企画が続いていくと嬉しいですね。

工場見学も非常に面白かったので、次回はもっと時間をかけて工程を見たり、現場の皆さんとお話ししたりしてみたいです。

ぜひ今後も参加させていただきたいと思っています。

おわりに

今回のお話から伝わってきたのは、印刷は完成品をつくるだけではなく、「どう楽しむか」までデザインできるということでした。

ポスターをZINEへと発展させる発想や、紙だからこそ生まれる体験は、まさに「BEYOND PRINTING」を体現するアイデアだったように思います。

また、紙への深い愛着や、特殊加工への探究心、そして「もっと実験してみたい」という言葉からは、冨貫様のものづくりに対する純粋な好奇心が感じられました。

ハピネスアワーをきっかけに生まれたこうした対話が、新しい表現や実験的なものづくりへとつながっていくことを、私たちも楽しみにしています。

文星閣ではこれからも、デザイナーの皆様とともに、紙・印刷の可能性を広げる挑戦を続けてまいります。

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インタビュー協力

グラフィックデザイナー 冨貫功一様

音楽業界を中心に、CDジャケットや販促物、コンサートグッズ、パンフレットなどのデザインを手掛けるグラフィックデザイナー。紙媒体ならではの表現を追求する一方、個人制作ではZINEの制作などにも積極的に取り組まれています。

▶ ホームページ

ROOTS

このたびはインタビューにご協力いただき、誠にありがとうございました。

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